潰瘍性大腸炎(UC)は、炎症が広がる範囲によって大きく3つのタイプに分けられる。それぞれの型によって症状の出方や治療法が異なるため、自分の炎症の範囲を知ることは重要だ。今回は、潰瘍性大腸炎の炎症の範囲について詳しく解説する。
1. 直腸炎型
炎症が直腸のみにとどまるタイプ。潰瘍性大腸炎の中では比較的軽症な部類に入るが、放置すると炎症が広がることもある。
主な症状
- 血便、粘液便
- 排便時の違和感や残便感
- 軽度の下痢や便秘を繰り返すことも
- 腹痛は少なめ
直腸炎型は、腸の上部には炎症がないため、症状が比較的限定的であり、治療も局所療法が中心になることが多い。
主な治療法
- 5-ASAの坐剤(ペンタサ坐剤など):直腸内で直接作用し、炎症を抑える。
- ステロイド坐剤:5-ASAで効果が不十分な場合に使用。
- 経口5-ASA(アサコール、リアルダなど):場合によっては併用。
2. 左側大腸炎型
炎症が直腸からS状結腸、下行結腸まで広がるタイプ。直腸炎型よりも症状が強くなる傾向があり、放置するとさらに広がる可能性がある。
主な症状
- 頻回の血便
- 強い腹痛やおなかの張り
- 下痢と便秘を繰り返す
- 体重減少(進行すると顕著に)
左側大腸炎型は、炎症の範囲が広がる分、治療も直腸炎型より積極的に行われることが多い。
主な治療法
- 5-ASA製剤(アサコール、リアルダなど):腸内で炎症を抑える。
- ステロイド(プレドニンなど):症状が強い場合に短期間使用。
- 免疫調整薬(イムランなど):長期的なコントロールを目的とする。
- 注腸療法(ペンタサ注腸、ステロイド注腸):炎症が左側に限定されている場合に有効。
3. 全大腸炎型
大腸全体に炎症が広がるタイプ。潰瘍性大腸炎の中でも重症化しやすく、治療を怠ると緊急入院が必要になるケースもある。
主な症状
- 頻回の血便(10回以上/日もあり得る)
- 激しい腹痛
- 高熱や全身倦怠感
- 体重減少、貧血
- 下痢が止まらず脱水症状を起こすことも
全大腸炎型は、炎症が広範囲に及ぶため、治療もより強力なものが必要になる。
主な治療法
- ステロイド(プレドニンなど):炎症を素早く抑えるために使用。
- 生物学的製剤(レミケード、ヒュミラなど):免疫を抑制し、長期的に炎症をコントロール。
- JAK阻害剤(ゼルヤンツ):重症例に使用されることも。
- 入院治療(絶食+点滴):重症の場合は腸を休めるために行う。
- 手術(大腸全摘):重症例や難治性の場合に考慮。
まとめ
潰瘍性大腸炎は、炎症の範囲によって「直腸炎型」「左側大腸炎型」「全大腸炎型」に分けられる。それぞれ症状の出方が違い、治療方法も異なる。軽症であれば坐剤や経口5-ASAでコントロールできるが、重症化するとステロイドや生物学的製剤が必要になることもある。早めの適切な治療が、病気とうまく付き合っていくためのカギとなる。
また潰瘍性大腸炎の症状の出方は個人差によっても変わってくる。必ず主治医と相談して治療方針を決めていってほしい。
潰瘍性大腸炎は一度良くなっても再燃することが多い病気。自分の炎症の範囲と治療法を理解し、日々の生活で無理をしないことが大切だ。
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